双極性障害は、心の波が極端に変動することで、日常生活に大きな影響を与える病気です。
しかし、適切な治療とサポートを受けることで症状をコントロールし、生活の質を大きく向上させることができます。
本記事では、双極性障害の特徴や原因、治療法についてわかりやすく解説します。悩んでいる方やそのご家族にとって、一歩踏み出すきっかけとなれば幸いです。
双極性障害とは?心の波を理解して適切に対処しよう
双極性障害は、感情や気分が極端に変動する精神疾患です。
「とても高揚する状態(躁状態)」と「とても落ち込む状態(うつ状態)」を繰り返し、これが仕事や人間関係、日常生活に支障をきたします。以前は「躁うつ病」とも呼ばれていました。
生涯有病率は1-3%とされ、誰にでも発症する可能性があります(世界保健機関:WHO)。
この病気は、早期に診断し、適切な治療を開始することで、長期的な症状のコントロールが期待できます。
症状の特徴とタイプ
双極性障害の主な特徴は、「躁状態」と「うつ状態」が交互に現れることです。また、症状の強さや現れ方により、I型とII型の2つのタイプに分類されます。
躁状態のサイン
- 異常なやる気や高揚感
- 睡眠が少なくても疲れを感じない
- 衝動的な行動(買い物の浪費、人間関係のトラブルなど)
- 必要以上の自信や誇大妄想
- イライラや攻撃的な態度
軽躁状態
- 躁状態の症状が軽度で、日常生活に顕著な変化をもたらします。
うつ状態のサイン
- 持続的な憂うつ感や無気力
- 将来への不安、興味や楽しみの喪失
- 食欲や睡眠の異常(増減)
- 疲労感、エネルギーの低下
- 希死念慮や絶望感
双極性障害のタイプ
- 双極I型障害:躁状態が顕著で、社会生活に深刻な影響を与える。
- 双極II型障害:軽躁状態と重度のうつ状態が交互に現れる。
双極性障害の原因
双極性障害の明確な原因は解明されていませんが、生物学的、遺伝的、環境的要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
遺伝的要因
- 一親等の家族に双極性障害の人がいる場合、発症リスクが高まる。
神経化学的要因
- ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスの異常が、感情の極端な変動に関与しています。
環境的要因
- ストレスフルなライフイベント(失業、離婚など)
- 睡眠不足
- 薬物やアルコールの乱用
双極性障害の診断
双極性障害の診断は、専門医による面接を通じて行われます。
日本では、「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル)が一般的に使用され、以下のような情報が診断に重要です。
診断に必要な情報
- 症状の持続期間
- 日常生活への影響(仕事、家庭、社会生活)
- 家族歴や既往歴
- 他の疾患との鑑別(うつ病、統合失調症など)
双極性障害の治療
双極性障害は、適切な治療を受けることで症状のコントロールが可能です。治療は主に以下の3つの方法で進められます。
1. 薬物療法
- 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など):躁状態とうつ状態の波を安定させる。
- 抗精神病薬:急性の躁状態や混合状態の治療に有効。
- 抗うつ薬:うつ状態の治療に使用。ただし、単独での使用には注意が必要。
2. 心理療法
- 認知行動療法(CBT):ネガティブな思考の癖を修正する。
- 家族療法:家族が病気を理解し、適切なサポートを提供できるよう支援。
- 睡眠改善プログラム:規則正しい睡眠を取り戻す。
3. 生活習慣の改善
- バランスの取れた食事と十分な睡眠。
- ストレスを軽減する工夫(趣味、運動など)。
日常生活での工夫
双極性障害とともに生活を送るために、以下の工夫が役立ちます。
- 支援体制の構築:家族や友人に病気を理解してもらう。
- 自己管理:気分や体調を日記やアプリで記録。
- トリガーの特定と回避:睡眠不足や過度のストレスを避ける。
早めの受診が双極性障害の寛解につながります
双極性障害は、早期発見と治療によって日常生活を取り戻すことが可能です。
治療を中断すると再発のリスクが高まるため、主治医との信頼関係を大切にしながら、長期的な治療計画を立てましょう。
医療法人常清会では、患者様の意思を尊重し、温かな医療と地域連携を提供しています。
あなたや大切な人が「双極性障害かもしれない」と思ったら、一人で抱え込まず信頼できる医療機関に相談してみてください。